大塚久雄 『社会科学の方法』
大塚久雄という人は、文系大学にいった人にとっては必ず聞く名前ではないでしょうか?
この人のマルクス研究やウェーバー研究には奥深いものがあり、それでいて非常にわかりやすく述べられていて、簡潔に社会科学の理念を確認できると同時に、社会科学をもっと深く学んでみたい、という気にさせるに十分なオーラを感じざるをなかったですし、今もこの人の著作を時間が許す限り読んでみたいと思い、この人の買いたい著作のリストが、どのショップにも往々にしてたくさんあります。
正直、マルクス(下写真)やウェーバーの著作は翻訳でも、結構難しい言葉で書いてあるので、理解ができない箇所がたくさんあります。
しかし、大塚久雄氏がそれらの本を読んで理解して、それを提示した本のほうがかなり読みやすく、興味を深く掻き立てられる気がするのは私だけでしょうか?
事実、大学時代に大塚久雄氏の『社会科学の方法』を読んで、「社会科学ってこんなに楽しいものなの!」と思い、この人の著作はもちろん、その他いろんな社会科学に関する本を多数読んでいったのを覚えています。
経済学や経営学といった文字を読むと何やら無機質な、金だけが全面に出てくる感じがしました、大学に入った当初は。
しかし、この大塚久雄氏の『社会科学の方法』という本を読んでそうではないことがわかりましたし、社会科学の主体は人間の心であり、その行動様式を探求することであることがわかって安堵の気持ちになったのでした。
どういうことをすればお客は喜ばれるか?
どういう場所に店を構えればお客さんがきてくれるか?
お客さんが飽きてしまったらどうしたらいいか? お客さんが来なくなったらどうすればいいか?
こういったことを把握するのが経営学ですが、それはやはり人間の心を把握しないことにはできた話しではないのです。
経営学…こういった堅苦しい文字を読んで忌避するのではなく、まずは経営の現場に出て、その様相を観察することがいいでしょう。 もしくはテレビ番組を見るのでもいいでしょう。
昔、『マネーの虎』という、5人の社長の前で起業希望の人がプレゼンをして投資をしてもらうという番組で、そこに出ていた社長の投資したい人のモラルとして、「正義感と社会貢献という2つのキーワードを持っている人」というパターンもあれば、「信念とフロンティアスピリッツを持っている人」というパターンがありましたし、投資希望者の心を問うときに、まず最初に儲かることを前面に出している人はくぎを刺されていたし、癒しの雰囲気を持っている人に投資したいという気持ちが往々と漂っていた感じがしました。
また、「貧乏脱出大作戦」という貧乏になってしまった飲食の自営業者が、売れている飲食店の店長の下で修業して、立て直すという趣旨の番組で、某日本料理屋のオーナー社長が修行希望者に向かって「僕は儲けようと思って経営していないから。」と言っていたのを思い出します。 もちろん、利益を上げないことには店も経営できないし、自分も生活できない。
しかし、最初に儲けようと思って始めるとうまくいかない。
お客さんに喜んでもらおうという気概が先にありきでないことには失敗する、ということでしょう。
これは起業に関するモチベーションの議論を醸し出しますし、これから起業することを考えている人にはそのヒントや、脳内に入れておいたほうがいい面を含んでいるように思います。
しかし、そういった精神を今のアメリカ人のほとんどが忘れられているような感じがするのでしょうか。 そんな議論が、持ち上がる機運を感じざるを得ないですね。
仕事に必死になって打ち込むというプロテスタンティズムの禁欲主義が資本主義のエートスであると、マックス.ウェーバーは喝破したのです。
そのことを書いた本が『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』になります。
その議論が注目を浴び、世界中でこの本は読まれているのですし、私の文系大学での4年間において、毎年必ずいずれかの教授がウェーバー(下写真)を引き合いに出していたのです。
しかし、その精神がアメリカでは失われてしまい、その精神の行きつく先が、モノづくりだったはずですが、その製品は粗悪で、どの国のものにもアメリカは負けているのです。
それのみか、アメリカは、持てる者と持たざる者の収入の差が、世界で一番小さいレベルだった第二次世界大戦後、その差は拡大していく一方で、金融工学を駆使して売り抜けて巨万の富を築いた人が勝ち、という社会に変貌してしまったのです。
日本も同じように格差は拡大し、一億総中流国家といわれた面影はもうないです。
それをいいことか悪い事かは、各人で考えて結論を出してもらいましょう。
しかし、アメリカと違って日本はモノづくりにおいては、いまだに世界を牽引しているのです。 ゆえに、輸出立国である事実は依然としているのです。
そういう様相を呈して変貌した現代社会において、どのような社会を目指すべきなのか?
そんな中で自分はどうすればいいのか?
こういった抽象的ですが、根源的な問題について深く考察するには、凄く大量の本を読み、資料を読み研究を重ねていかなくてはならないでしょう。
しかし、最も基本的な理論を学んで先に進まなければ土台の薄れた支離滅裂な議論に逢着してしまいます。
そうならないためには、瞠目すべき古典的な名著の理論を学んでから先に進む必要があるでしょう。
その際にお勧めできるのは、この大塚久雄の『社会科学の方法』になります。
●非常にお勧めです!
| 社会科学の方法 ヴェーバーとマルクス (岩波新書) [ 大塚 久雄 ] | ||||
|
今回はこれにて失礼いたします。
ありがとうございました!


コメントを書く... Comments